LATENS LAB — 一次情報の検証
10分から17秒になったスカウト文と、送ってはいけなかった1通
2026年10月26日(2026年10月27日 更新) / 読む目安 6分
GoogleスプレッドシートとGmailをつないで、新卒のスカウト文をAIに書かせました。1通あたり16.8秒です。いままでは1通に10分かけていました。
ただし、書かせた5通のうち1通は、募集の対象ではない相手に宛てたものでした。AIはその人の卒業年を正しく読み取り、本文に書き、そのうえで下書きまで作りました。止まりませんでした。
株式会社Latensは、ClaudeなどのAIを社内のGmail・Googleカレンダー・Googleスプレッドシート・Slack・Google Drive・GitHubなどにつなぐ LatensOS という製品を提供しています。つなげる先の一覧と、AIに渡せる操作、つなぐときにお願いする権限は、すべて公開しています。
つないだもの

図:つないだのはGoogleスプレッドシートとGmailの2つ。AIがシートを読んで本文を書き、Gmailの下書きにします。送信の権限は渡していません。
使ったのは2つだけです。
役割 | AIに渡した操作 | |
|---|---|---|
Googleスプレッドシート | 候補者のプロフィールを読む。書いた本文を書き戻す | 範囲の値を取得する/行を追加する |
Gmail | 本文を下書きにする | 下書きを作成する |
送信の権限は渡していません。下書きまでです。理由は別の記事に書きました。
渡した指示は、募集要項と書き方のルールだけです。候補者1人ずつにプロンプトを書き分けてはいません。
やったことは3つ
① 候補者をスプレッドシートに並べる。A〜J列にプロフィール、K列は空のまま。Notionでも同じことはできます。列と行があれば足りるので、ここではスプレッドシートにしました。
② 指示を1本書く。候補者ごとに書き分けてはいません。5人ぶんで1本です。実際に渡したものから抜粋します。
シート
01_候補者の A〜J列、C01〜C05 の5行を読む。2028年卒の新卒。エンジニア職とビジネス職の両方。
件名と本文の冒頭で、その人のプロフィールの具体的な中身に触れる。「ご活躍を拝見し」のような、誰にでも当てはまる書き出しにしない。
本文は
01_候補者の K列へ書き戻す。同じ本文で Gmailの下書きを5件作る。送信はしない。開始と終了の時刻を
dateで測り、03_記録に書く。推測の数字は書かない。
③ 走らせて、見ている。AIがシートを読み、5通書き、K列に書き戻し、Gmailに下書きを5件作り、時刻を記録まで書きました。こちらの操作はここで終わりです。

AIが自分で時刻を測って書き込んだ記録。スカウト文5件は09:49:51に始まり09:51:15に終わっています(=84秒)。「所要(分)」もAIが計算して入れました。人は1行も触っていません。
10分が17秒。画面を閉じるまでは1分48秒

図:かかった時間。前は当社調査の推定、後は秒単位の実測です。
前の数字は当社調査の推定です。後の数字は実測で、秒単位で記録を取りました。
ただし、この秒数は「文章を書き終えるまで」です。
実際には、スプレッドシートを読んで、5通書いて、シートに書き戻して、Gmailの下書きを5件作って、中身が崩れていないか照合するまでに 9分01秒 かかりました。1通あたり 1分48秒 です。
そのうち1回は作り直しです。件名の1文字が「話」から「虱」に化けて、2回直してようやく通りました。原因はつないだ先ではなく、AIが文字列を書き写すときの取り違えでした。
10分が17秒ではなく、10分が1分48秒。これが本当の数字です。それでも5分の1以下になっています。
送ってはいけなかった1通
募集は2028年卒です。5人のうち1人が2027年卒でした。

① シートの卒業年は2027。② AIが書いた本文「今回は…2028年卒の方を募集しています」。氏名は伏せています。
AIが書いた本文には、こうあります。
今回はエンジニア職とビジネス職の両方で、2028年卒の方を募集しています。プロフィールでは2027年卒業予定と拝見しましたので、その点も含めて一度お話しできればと思います。
読み落としではありません。卒業年を読み取り、募集と合わないことも書いたうえで、下書きまで作りました。抜けていたのは、読み取る力ではなく、工程です。

図:抜けていたのは、相手を選ぶ工程。本文を書く・下書きを作るはAIが完走しています。
ここが、速さの話より大事なところです。1通16.8秒で書けるということは、条件に合わない相手にも16.8秒で書けるということです。5通なら目で気づきます。500通では気づきません。
5通すべてに残った、人の判断
対象外の1通とは別に、5通すべてで人が決めなければならないことが2つ残りました。
中身 | |
|---|---|
誰の名前で送るか | AIは代表の名前で署名しましたが、本文には「代表との面談」と書いてあります。代表本人が送るなら、文が噛み合いません |
「選考ではありません」の扱い | 直前に「一次面談(30分・オンライン)」と書いているので、同じ30分に見えます。カジュアル面談と一次面談が別のものなら問題ありませんが、同じなら矛盾します |
どちらも、こちらが指示に書かなかったことです。書かなかったぶんが、そのまま出てきました。
面談シートが空のまま返してきた欄
面談シートは33秒で出てきましたが、逆質問への答えの欄は〔要記入〕のままでした。
答えの下書きは、こうなっていました。
「社員3名の会社なので、書いた人と顧客の間に入る人の層は少ない。今のところ、書いたものが顧客の環境で動くまでは〔要記入:現在の反映までの期間・頻度〕。入社して最初に触ってもらうのは〔要記入:新人の最初の担当範囲〕を想定している。」
※期間・担当範囲は事実を確認してから入れる。数字を作らない。
社内の人間しか知らない事実です。AIは埋められないと判断して、埋めませんでした。注記まで自分で付けています。
120分が33秒になったのではありません。120分のうち、読んで組み立てる部分が33秒になり、自社の事実を書く部分は残りました。
人が見る場所を先に決める
今回の構成で、人が見る場所は3つです。
- 送る相手を決めるところ(対象外を外す)
- 送信ボタン(AIには渡していない)
- 自社の事実が入る欄(AIは空で返す)
速くなったのは、この3つ以外の部分です。
つなぐ前にこの3つを決めておけば、AIが止まらなくても事故になりません。決めずに繋ぐと、16.8秒で間違いが増えます。
つなげる先の一覧と、AIに渡せる操作、お願いする権限は、コネクタ一覧に全部出しています。
同じ構成を自社で組んでみたい場合や、つなぎたいサービスが一覧にない場合は、ご相談ください。